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AI搭載の大腸カメラは「見落とし」をどう減らす?―「AIに頼ると医師の腕が落ちる」は本当か
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けるとき、多くの方が気にされるのは「痛くないか」と並んで、「ちゃんと見つけてもらえるか(見落とされないか)」だと思います。せっかく検査を受けても病変を見逃されてしまっては、検査の意味が半減してしまいます。
近年、この「見落とし」を減らす切り札として、AI(人工知能)を搭載した大腸カメラが急速に普及してきました。この記事では、AIが見落としをどう減らすのか、そして「AIに頼ると医師の技術が衰えるのでは」という疑問について、研究データをもとにお伝えします。私自身、この内視鏡AIの研究に携わってきました。
なぜ大腸ポリープは「見落とし」が起こるのか
大腸の内側には、ひだ(しわ)や曲がり角が多くあります。小さなポリープや、盛り上がりの少ない平坦な病変は、そのひだの陰に隠れてしまうことがあり、どれだけ丁寧に観察しても一定の割合で見落とされ得ることが、これまでの研究で分かっています。
見落としを減らすために、医師は腸をていねいに伸ばし、ひだの裏側まで観察する技術を磨いてきました。そこに新しく加わったのが、AIによる「もう一つの目」です。
AI(画像診断支援・CADe)が発見率を高める
AIを搭載した大腸カメラでは、検査中の映像をAIがリアルタイムで解析し、ポリープの疑いがある箇所を見つけると、画面上で即座に知らせてくれます。この仕組みは「CADe(コンピュータ支援検出)」と呼ばれます。
人間の集中力には限界があり、長い検査の中で一瞬見逃しが起こることもあります。AIは疲れることなく全画面を監視し続けるため、腺腫(将来がんになりうるポリープ)の発見率(ADR)が高まることが、国内外の多くの研究で示されています。当院でも、このAIを搭載した大腸カメラを用いています。
「AIに頼ると、医師の腕が落ちる」は本当か ― 研究の答え
AIが普及する一方で、専門家の間ではこんな懸念も語られてきました。「AIに頼り続けると、AIがない時に病変を見つけられなくなる(技術の低下=デスキリング)のではないか」。これは、医療の質を考えるうえでとても重要な問いです。
この疑問に正面から取り組んだ研究に携わってきました。約1万9千件の大腸カメラを対象に、AIを使った検査と使わない検査を比較・分析したところ――
AI(CADe)を導入したあと、AIを使わない検査での発見率も維持され、時間が経っても低下しなかったことが報告されました。
つまり、AIは医師の技術を奪うのではなく、むしろAIと医師が互いに補い合うことで、より安定して見落としの少ない検査につながると考えられます。AIが指摘し、最終的な判断と処置は専門医が行う――この“協働”が、これからの内視鏡の理想的なかたちだと感じています。
当院のAI搭載大腸カメラ ― 3つの柱
こうした研究にたずさわってきた経験から、当院では次の3点を大切にしています。
- AIによる発見支援:小さな病変・平坦な病変の見落としを減らす“もう一つの目”
- 専門医の判断との両立:AIの指摘を、内視鏡専門医の経験と組み合わせて評価する
- 苦痛への配慮:鎮静剤やCO2送気を用い、できるだけ楽に受けていただく
さらに、検査中にポリープが見つかった場合は、その場で日帰り切除(コールドポリペクトミー)に対応できる体制を整えています。
こんな方は、大腸カメラのご検討を
便潜血が陽性だった方、血便・便通の変化が続く方、40歳以上で未受診の方、ご家族に大腸がんやポリープのある方は、お早めにご相談ください。
参考文献(著者として関与した研究)
- *Endoscopy.* 2026.(AI画像診断支援(CADe)の長期的な影響に関する前向き観察研究)[PMID: 40683257]
文・院長 髙階 祐輝(日本消化器内視鏡学会 専門医)/研究歴:昭和医科大学横浜市北部病院 消化器センター
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。